グローバル人材は
バターと化している
バターと同様、国内需要を満たすため人材も輸入が必要
バター不足が続き、店頭でのバターの品切れが深刻だそうです。近年の酷暑で搾乳量が減ったなど、理由はいろいろあるでしょうが、やはり最大の原因は、国内生産を過剰に保護したことによる、生産統制と輸入規制にあるでしょう。
私は人材市場が牛肉・オレンジと同じ道を辿る、という予測を基にグローバル人材を積極的に起用していますが、牛肉・オレンジが普通に出回っていた世代の人たちには実感が湧かないようです。
ですが最近、バターが品薄になって輸入に頼らざるを得なくなっている状況を見れば、人材も海外から受け入れざるを得なくなることは必至であることがお分かりでしょう。既に、グローバル人材はバターと化しています。国内の需要を満たせない人やモノを、海外から調達するのは当然の流れです。これから益々、人材のグローバル化が加速し、バターと同様に人材も「輸入」が増えて行くでしょう。
世界的なエンジニア争奪戦激化の中、IT人材の育成は国に頼れない
IT技術の進化に伴い、エンジニアの役割は重要性を増しています。政府はグローバル競争に勝ち残る人材の育成を成長戦略に盛り込み、プログラミングなどITの実践的な教育に特化した新しい高等教育機関を設けるそうです。少子化で学生不足に悩む私立大学や専門学校からの移行を想定し、来年度にも関連法案を改正するとしています。そして2019年度からの開校を目指すそうです。
でも、そんな悠長なことを言ってられるでしょうか?4年後に学校を作ってから、教える人材も乏しい上に生徒が確保できるとも限りません。仮に教員と生徒の数が揃ったとしても、IT業界の変化のスピードは速く、学生たちが即戦力になるのは10年程先のことです。かつて法曹人口を増やす政策を打ち出して乱立した法科大学院の多くが閉鎖に追い込まれている状況の繰り返しになると予想されます。
バイリンガル人材への需要はひっ迫する一方だが・・・
また文部科学省は、中学高校の「生徒の英語力向上推進プラン」を発表し、中学3年生全員を対象にした英語の学力テストを新設する方針を明らかにしています。これもまた日本人の英語アレルギーを助長するのではないかと危惧されます。日本人の英語が諸外国に遅れをとっている理由は、英語がコミュニケーションの手段ではなく、学校で勉強する学科になっているからです。
今では多少、変わったかもしれませんが、私が受けた日本の公立学校の英語教科は、教科書どおりの語順でないと減点されました。実際のコミュニケーションなら、語順が違っても意思疎通は出来るし、英語に限らずすべての言語はお互いに言いたいことが通じてこそ、なので発音や文法、語順は二の次だと私は思います。杓子定規に教えるだけの日本の学校の英語教科は「間違ってはいけない」と、英語修得への意欲をむやみに削いでいます。増してや試験を強制して点数で評価されたら、英語を使えるようになりたいと思っている学生にも点数による序列意識を植え付け、益々萎縮させてしまいます。
だから個人が人材グローバル化を見据えたキャリア・ビジョンを持つべし
ひっ迫するグローバル人材需要に供給が追い付けないから、人材も輸入に頼らざるを得ないのはほぼ確実です。すると同時に、日本人が日本で、海外から来たグローバル人材と一緒に働く機会も増えるでしょう。エンジニアに限らず、どんな業種でも得意分野があり、業務スキルがある上に英語が出来れば鬼に金棒です。
ITも英語も、実践的な教育が国に頼れないとしても、個人がITなり英語なりを使う仕事に興味を持ち、キャリアビジョンを持てば、自ずと海外から来た人たちと働き、英語を使う環境での就業機会が得られるのではないでしょうか。
エンジニアになるために特別な才能は必要なく、経験を積むことで誰でもなれますから、ITスキルを身に着けるために、今は様々なオンライン講座があります。またミートアップ等のソーシャル・メディアではIT関連の開発手法を教える講座や開発者が情報交換をするイベントもあります。そうした開発やコーディングの講義や集まりに参加し、興味のある会社やプロジェクトの門を叩いてみるのもいいでしょう。
ITのスキルがあり、完璧な英語ではないにせよバイリンガルとしてのキャリア形成を望んでいれば、海外から来たバイリンガル・エンジニアと一緒に働きながらキャリアアップを図ることも可能です。そのためにやはり、自分でビジョンを持ち、可能性がありそうな事にトライし続けることが肝要です。そうしているうちにバイリンガル・エンジニア、あるいはバイリンガル・プロフェッショナルとして道が開けて行くでしょう。
©(株)ライフワーク・アドバンス代表 岡田ひろみ