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雇用や採用に国は口先介入するなかれ


私が生まれて初めてアメリカに行ったのは約30年前、大学1年生の夏でした。そしてそのスケールの大きさに圧倒され、「日本はよくこんな国と無謀な戦争をしたもんだ」と思ったものです。そして物質的な豊かさに加え、文化や精神的な面にも興味を持ち、「絶対アメリカに留学しよう」と心に誓ったのでした・・・。

留学を終えてから既に20年以上経ち、その間にアメリカの会社で働いたり、何度か往復しているうちに若かりし頃に受けた強烈な印象は消え失せていたのですが・・・。最近の日本政府の雇用や新卒採用への口先介入を見るにつけ、やっぱりアメリカには到底及ばないなあ、と思い出した次第です。

国が要請しても雇用は増えない

厚生労働相が経団連に「非正規雇用でいる人たちを正社員として雇用せよ」と要請したそうですが、余計なお世話もいいところですねぇ・・・。企業は収益に貢献してくれる人材なら喜んで採用するでしょうが、解雇規制の厳しい日本でむやみに正社員を増やしたら、ちょっとでも業績が傾いた時に致命的な重荷になります。

たとえ国に言われて社員を増やしても、企業は儲からなければ給料を払えないのですから、本当に雇用を増やしたいなら、企業の生産活動の土台となるインフラ整備や適切な制度設計の方がよっぽど重要でしょう。

その一方で生産性を上げるための設備投資をしろなどと矛盾したことを言っているのですから、設備投資をして自動化が進めば、人的作業が減るという、基本のキをご存知ないのでしょうか。

新卒採用にも国は介入せず、各社の裁量に任せるべし

また新卒採用の開始時期に関しても、6月だの8月だのと政府が要請しているそうでうが、本来なら企業は独自に採用活動を行うべきなので、横並びで一斉にやる必要はないのです。通年採用にして、企業も学生も任意でタイミングが合えば面接なり採用試験を受けられるように出来ないのでしょうか?

大手企業に学生が集中したって、今の時代、大手が好む金太郎飴みたいな人材が必ずしも収益に貢献するとは限りません。また、新卒で入った会社で定年まで勤めあげるなんてのは、初恋の人と結婚して添い遂げるほどの確率でしょう。たまたま新卒で入った会社で職業人生の大部分や生涯賃金が決まる時代でもありません。

オバマ大統領はスティーブ・ジョブス氏にアドバイスを求めた

シリコンバレーで名だたるIT企業のトップと会談したオバマ大統領は、「どうしたらアメリカで雇用が増えるか」と生前のジョブス氏にアドバイスを求めたそうです。

ジョブス氏は、プログラミングの出来る人材を増やすよう提言し、コミュニティ・カレッジで社会人になってから夜間にプログラミングを学べたり、中高生の授業にも組み入れることなどを提案しました。そしてオバマ大統領はそのアドバイスを実践し、コミュニティ・カレッジでのプログラミング授業などの予算を決めたそうです。

雇用を増やすには、企業の生産活動に貢献する人材を増やさなければなりません。それこそ政府の仕事なのですから、一方的に上から目線で「雇え」「採用時期は足並みを揃えろ」などと指図するのは、はなはだナンセンスです。

不本意ながら非正規で働いている人たちにスキルアップの機会を提供し、さっさと硬直的な労働規制を緩和して労働市場の流動性を高め、より将来性のある(と思われる)産業に人材をシフトさせることこそ国がやるべき役割ではないでしょうか。

政治家や役人は税金が雨のように降ってきてお給料がもらえるから、収益貢献への対価としての給料がもらえる、という根本的な原理をご存知ないのでしょう・・・。

©(株)ライフワーク・アドバンス代表 岡田ひろみ

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